2016.11.30

イノベーションで立ち向かう民泊の納税問題 Airbnbインタビュー

  日本でも利用者が急速に増えている民泊。世界最大手のAirbnb(エアービーアンドビー)は、たった数年の間で旅行業界に大変革をもたらした。安価な宿泊を求める旅行者と、不動産の空きスペースを使って稼ぎたい個人を結びつけるビジネスモデルで急成長するこの会社も、税の徴収の課題に直面している。英語版Tax Insights編集部は、Airbnbでグローバル税務ディレクターを務めるベス・アデア氏に、さらなる成長を実現するための税務の取り組みとイノベーションの役割について聞いた。

 

編集部:Airbnbではイノベーションはどのような役割を果たしていますか?

 

ベス・アデア:Airbnbにとってイノベーションは極めて重要です。私たちの核となるビジネスモデルはとても革新的なものです。ホームシェアリングは何十年間も存在してきましたが、当社はホームシェアリングを革新的なインターネット経由で行っています。また、革新的なビジョンを持っており、ただ単に旅行者が泊まる場所を探すお手伝いをすることを目指しているだけではなく、どこに旅行しても、旅行者が旅先で現地の人になったような気分を味わって欲しいと思っています。私たちは、人と文化の障壁を取り除き、世界をひとつにしたいと思っています。したがって、最も戦略的なレベルでも、また当社があらゆることを遂行する上でも、イノベーションは重要なのです。

 

編集部:イノベーションによって税務に関する新たな問題が生じる可能性があります。Airbnbは最近、同社のサービスを利用して自宅を貸し出すことから生じる税務問題に対処するための支援サービスの提供を始めました。この取組みの背景には何があるのでしょうか?

 

アデア:当社には、私たちの地域社会を支援するという哲学があり、常にその方法を模索しています。不動産を貸し出すことから生じる納税義務は非常に厄介であるということは認識していました。宿泊を提供するホストが影響を受ける税金は多種多様であり、Airbnbがプラットフォームとして果たすべき適切な役割についてじっくり考える必要がありました。これらの税金は非常に多くの場合、当社が徴収するのではなく、ホストが徴収する法的責任があります。しかし、私たちは、どうすればホストが税務コンプライアンスを遵守するための支援ができるのかを理解したいと思いました。「どうやればいいのか?」「効果的に実行することができるだろうか?」「課税管轄区域の税務当局は受け入れてくれるだろうか?」「ホストはどう反応するだろうか?」など、私たちはこの問題についてよく考え、様々な戦略的な分析を行いました。最終的に、私たちは、ホストを税務問題で支援することは正しいことだという結論に達しました。最大の理由は、これがホストを支援できるもうひとつの方法になると確信したことであり、また、当社はこの支援を提供できるユニークな立場にありました。

 

編集部:では、所得税についてどのようにホストを支援していますか?

 

アデア:所得税については、どちらかというと補助的な役割を果たすことを決めました。ホストに納税義務について教育しようとしています。納税時期には各ホストにリマインダーメールを送り、当社のプラットフォームでの彼らの活動に関する要約情報を提供しています。米国など一部の国では、税務サービス最大手のH&Rブロック社と提携して、ホストが当社のサービスの仕組みや、ホストの潜在的な税務問題について十分理解してもらうようにしています。所得税に関しては、当社はホストに教育や支援サービスを提供したいと思っています。

 

編集部:それでは、観光税についてはどのような支援サービスを提供されていますか?多くのホストにとって観光税を扱うのはこれが初めての経験であることは間違いないと思いますが。

 

アデア:当社は、観光税についてはより直接的な役割を担うことを決めています。この税金は、ホテル税、観光税、宿泊税など様々な呼称で呼ばれています。この税金は取引ごとに支払う必要があります。すべての取引は当社のプラットフォーム経由で行われることから、当社が間違いなくこの税金の徴収について役立つことができると思いました。当社は、宿泊ゲストとホスト間の取引に係る金額を徴収しているので、ホストに代わってこれらの税金を実際に徴収し、関連する税務管轄区域の税務当局に当該税金を送金し、ホストから当該税金に係る手続上の負担を取り除くことができる立場にあります。

 

編集部:Airbnbの税務支援サービスはどれくらい広範に提供されていますか?

 

アデア:2年ほど前に最初の税務管轄区域で税務支援サービスを開始しましたが、それ以降、継続して拡大しています。当社が事業を展開する世界中の税務管轄区域のうち、観光税が課税される数千の税務管轄区域の中の約200の区域で、現在、観光税の徴収サービスを提供しています。したがって、まだ比較的初期段階であると言えますが、確実に増やしています。税務支援サービスはかなり大規模な取組みで、米国だけでも、約3,600種類に及ぶ税金があります。

 

編集部:御社のホストに対する税務支援サービスに関してどのような将来ビジョンをお持ちですか?

 

アデア:その他の税金についても、当社がどのような支援を提供できるかについて引き続き検討しています。それぞれの税金について、私たちは次のような自問を続けています。どのようなサポートが適切なのか?それは教育なのだろうか?それとも、直接的に関与することなのだろうか?所得税や観光税の支援サービスについて検討した時と同じ質問です。今までのところ、所得税と観光税に関して最も積極的に支援サービスを提供しています。なぜなら、所得税と観光税が当社のホストにとって最も重要な税金だからです。将来的には、その他の税金に関するサポートについてもより積極的に関与するかもしれませんが、現時点では、所得税と観光税がホストにとって最も重要であると考えています。

 

編集部:御社の税務支援サービスの取組みについてどのようなフィードバックを受けていますか?

 

アデア:必ずしも、その点に関してあまり多くのフィードバックを得られていません。すでにホストから得られたフィードバックから言えることは、どれも非常にポジティブで感謝に満ちたものだったと思います。税務当局にもとても好評です。ある特定の市や郡には、何百も、何千もAirbnbのホストが存在していることがあります。税務行政の観点からすれば、何百、何千という小規模納税者に対応するよりも、1つの大規模納税者に対応する方がはるかに簡単です。当社の税務支援サービスに関しては、市、郡、州、国など、様々な税務管轄区域の税務当局から高評価を得ています。

 

編集部:Airbnbの将来ビジョンとはどんなものですか?また、税務支援サービスがどのように御社のビジョン実現を後押しすることになりますか?

 

アデア:当社が企業として重点を置いていることは、当社のゲストが世界中を旅行し、行く先々の文化を実際に体験する時に、現地に住んでいるような気分になるようお手伝いすることだと思います。税務サービスがこれを後押しするという点について、私は次のような見方をしています。私たちは、世界中のあらゆる地域社会において受け入れられる必要があり、また、ホームシェアリングも受け入れられる必要があります。税金の徴収をお手伝いすることは、当社が世界中の都市やホストにとって良きパートナーとなるためのステップのひとつだと考えています。

 

※写真は、Airbnbのサンフランシスコ本社での税務チーム。Airbnbは、教育や税務支援サービスの提供や、一部の税務管轄区域では税金の徴収サービスの提供を通じて、世界中のホストが納税義務を果たす支援をしている。アデア氏は、上記写真の右から2人目。


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