2017.04.10

英国がEU離脱を通告、日本企業への影響は?

 昨年6月の国民投票で英国のEU離脱が決定してから国際社会が注視してきた離脱通告のタイミング。3月29日、メイ首相が欧州理事会に対して離脱を通知したことによりリスボン条約50条が発動し、Brexitは現実のものとなった。

 

 英国は、通告の日から2年以内に脱退の条件を定めた協定を交渉しなければならず、締結できなければEU法は原則として適用されなくなる。交渉の結果は当面公表されないため、英国でビジネスを展開する企業はBrexitを取り巻く不確実性と向き合いながら、次の一手を考えなければならない。

 

 メイ首相は「英国は可能な限り自由な貿易を目指す」が、「その条件は各産業に異なる影響を及ぼすため、全グループへの影響を把握するには交渉を注意深く見守る必要がある」と述べた。一方、閣僚からは、仮に離脱交渉が決裂してもまったく問題はないとの強気の発言が出ている。

 

 しかし、多国籍企業は先手を打つかのように、Brexit対応を打ち出している。一部の金融機関は、英国からEUへの人材の再配置に着手しているという新聞報道もある。

 

 リスボン条約50条の発動により、日本企業が受ける影響についてまとめてみた。

 

人的移動

 

 EU離脱支持派の最大の根拠とされたのが、移民の流入であり、英国がEUから離脱することにより最も影響を受ける分野の一つが「人の移動」であろう。

 

 Brexitにより、自由移動に関するEU指令(「指令」とは、EU法源の一種)が適用されなくなり、出入国は英国法に委ねられるようになる。企業は人材の採用、移動で影響を受け、賃金を含めた人的コストが上昇するおそれがある。

 

 さらに、EU離脱によりEUの社会保障協定が適用されなくなる公算が大きい。仮に、英国と社員の出身国との間に社会保障協定が締結されていない場合、二重課税のリスクがあり、企業は社会保障費の増加のリスクに直面する可能性も否定できない。

 

法規制

 

 あらゆる分野における法的関係の継続性を重視する観点からEUの法規制が離脱後も適用される可能性があるが、この点についてもまだ不透明だ。

 

 契約が引き続き効力を有するかどうかは、英国がEUを離脱した後、企業は直ちに確認する必要がある。特に規制の影響が大きい銀行、保険、ライフサイエンス業界は注意が必要だ。

 

 また、サービスや製品がEU当局により規制されている場合、英国とEUの両方で事業を行うための新規登録や二重登録が必要かどうか検討する必要がある。従来の貿易体系がEU離脱後、企業にとって最適のビジネスモデルでなくなることも予想され、機能の一部をEU域内に移動するといったサプライチェーンの再考も必要だ。

 

税務

 

 法規制とともに、大きな影響が予想されるのが税務分野だ。仮に、英国とEUが貿易協定で妥協点を見出すことができなかった場合、英国は関税同盟からも離脱すると思われる。その場合、英国には世界貿易機関(WTO)加盟国に適用される税率が適用される。これは、英国とEU間で輸出入を行う企業のサプライチェーンに多大な影響を及ぼす可能性がある。

 

 また、英国が関税同盟を離脱すれば、EUとの輸出入に税関申告と別途のセキュリティチェックが必要になる。その結果、輸送時間が長くなりコンプライアンス費の増加も予想される。

 

 貿易のみならず、Brexitはグローバル企業の法人体制の見直しを迫る可能性もある。英国とEU間で事業展開する企業には、親子会社指令や利子・ロイヤルティ指令等の主要指令の多くが適用されなくなることにより、源泉徴収コスト等が増加することも想定される。

 

為替

 

 Brexitの影響で忘れてならないのが、為替への影響だ。昨年6月の国民投票以降、ポンドは米ドルに対して10%以上下落している。ポンド安は、英国の輸出価格の低下を通して経済を下支えしており、外国人投資家にとっても不動産を以前よりも安く購入できるというメリットがある。しかし、英国に生産拠点を置く企業にとって、ポンド安は輸入価格の上昇を意味する。為替の面からも、企業はサプライチェーンを再検討する必要があるかもしれない。

 

※写真の出所:
メイ首相 Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com


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