2017.09.20

EU単一市場に残る障壁

 移民の流入、脆弱な経済成長、そして英国のEUからの離脱……。いま、欧州は数々の難題にぶち当たっている。

 

 モノ、サービス、資本、人が国境を越え自由に行き来するEU単一市場は、グローバリゼーションの最大のサクセスストーリーといえる。域内にある貿易の障壁を何百も取り払うことによって、EUは世界最大の経済圏へと飛躍した。

 

 しかし、この壮大なプロジェクトの行く末は、以前ほど明確でなくなってきている。欧州はいま、移民流入や脆弱な経済成長、英国のEUからの離脱と格闘しているのだ。



(写真1: オーストリア・ハンガリー間の国境検問所)

 

 写真家ヨセフ・シュルツ氏は、「Übergang」(ドイツ語で「移行」の意)と呼ばれるプロジェクトとして、欧州に点在する使われなくなった国境検問所を写真に収めた。欧州内にある「物理的」国境は見えなくなったかもしれないが、EU5億人の「精神的」境界を打ち崩すのは難しい、と彼は言う。

 

 「国境検問所は、不要になった見張り番や消えゆく過去の分断のモニュメントを彷彿とさせます」と自身のウェブサイトに書くシュルツ氏。「そして、これらは我々が達成できていないことを思い起こさせ、それまで使われてきた機能がある日、容易に復活することだってあり得る、とも語り掛けているのです」



(写真2: スペイン・フランス間の国境検問所)

 

 単一市場というのは、現在進行形の作業。EUも、eコマース、金融、エネルギー、交通、サービス、税務といった幅広い分野で、障壁が残っていることを認めている。経済協力開発機構(OECD)が昨年公表したワーキングペーパーによると、年金と所得に関する二重課税のおそれが、単一市場内での労働人口の移動の妨げになっているとの見解を示した。



(写真3: ドイツ・オーストリア間の国境検問所)

 

 欧州単一市場はいま、まさに存在そのものの試練に直面している。いくつかの国では、近年の移民流入に対応するため、国境検問を時限的に導入しており、これは地域経済に影響を与えている。また、いくつかの国では、自国とEU加盟国、また非加盟国との国境にフェンスを建てており、さらに英国はいずれ単一市場から離れていく。



(写真4: オランダ・ドイツ間の国境検問所)

 

 恒久的な国境検問が再導入された場合、EUにとって失うものが多い。欧州各国間の貿易が落ち込み、域内GDPも下落するであろう。未来の欧州の国境に何が描けるのか?


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