2018.02.13

デジタルへ突き進む税務管理 第1回

 新時代に突入した税務管理のデジタル化は、企業の税務、財務、IT部門に新たな対応を迫っている。

 

 多くの専門家は、時にあまり深い思慮もなく、デジタル化の現象を「破壊」という言葉で表現し、新聞・雑誌・テレビといったメディアを賑わせている。

 

 しかし、ほとんどの場合、破壊を「新たな機会の創出」という側面で捉え、その背景にある「課題」にはあまり言及してこなかった。マーケットシェアの拡大、市場における先手必勝、新たなツールや商品の提供・・・これらは確かに魅力的ではあるが、それはコインの片面でしかすぎない。

 

 税の世界の破壊が突き付ける課題がどんどん明確になってきている、と指摘するのはEYが発表した「デジタルへ進む税務管理(Tax administration goes digital)」。税務政策と税務管理における膨大、迅速で、時には矛盾をはらんだ変化について行くのに、多くの納税者は頭を抱えている、とレポートでは述べられている。

 

税務当局のデジタル新時代

 

では、デジタル化の変化はどのような段階を踏んでいるのか。以下が挙げられる。

 

1. 破壊の始まり

 

 多くの国々は、これまでにないデータ提出方法と電子的税務調査を導入しており、新たな課題を突き付けている。まず企業は、税務や財務情報へのアクセスにおける困難を克服しなければならない。複数のERP(enterprise resource planning =経営資源の一元管理による業務の効率化)システムに情報がまたがる場合は、特にそうだ。既存の社内プロセスが新たな提出方法に合わないケースも出てくる。ビジネスは、常に変化するルールを把握し、そのインパクトを理解し、変化の速度に対応しなければならない。

 

 変化による影響は多岐にわたるが、特筆すべきものが1つある。各国の税務当局がデータ集計の地点を取引の地点に近づけるほど(情報の「上流」へと移行するほど)、企業が提出するデータは「生」のものになり、これまでのような「加工された」最終提出を前提としたデータでなくなる。

 

 クオリティーチェックされていないデータが集計されることにより、納税者と税務当局の間に新たな摩擦が予想される。その結果は?税務調査が増えるおそれがある。企業は、当局からの問い合わせに効率的かつ迅速に対応しなければならない。それに応じられなければ、様々な罰則が科せられる可能性が出てくる。納税額に関する紛争が生じるおそれもある。場合によっては、納税者が正しい手続きを踏まなかったせいで還付が拒否されるケースも想定される。

 

2. 税務管理はデジタルへ

 

 税務管理のデジタル化の進行は、税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトと軌を一にする。デジタル化の大きな目的は、脱税や不正の監視だ。また世界の税務当局には、より多くの税金を、より効率的に徴収するという共通目的がある。

 

 経済協力開発機構(OECD)が提案するStandard Audit File for Tax (SAF-T)と呼ばれる標準フォーマットによる会計データが、欧州で広がりを見せている。しかし、そのような共通プラットフォームの設計や導入は、結局のところ国家レベルで行われるため、国によって数々の違いが生じる。

 

3. デジタル税務管理の進展のいま

 

 税務管理のデジタル化のスピードが最も顕著に現れる分野の1つは、税務当局がいかにデータ解析を使って国別報告書(CbCR=Country-by-Country Reporting)におけるリスクを検証するかだ。世界中の税務当局が今年6月から始まる国別報告書の交換に向けて準備を進めるなか、OECDは税の透明性に向けた税務リスクに関する提言レポートを発表した。

 

 国別報告書を通じて税務当局は、初めて多国籍企業の税務管轄地ごとにおける収入、利益、税金の全容といったデータを入手することになり、得られる情報の量も質も飛躍的に向上する。

 

 OECDが2017年9月に発表した上述のレポートには、税リスクを検証するために国別報告書を用いる際の提言を、19項目のリスク指標を使ってまとめている。これらの指標は、他から得られる情報と合わせることにより、多国籍企業の全体的な税務リスクを評価することができる。

 

 税務管理のデジタル化は、税務申告の終焉を意味するパラダイムシフトではない。むしろ、データ提出要求の増加、データアナリティクスの向上や、税務当局同士及び納税者と税務当局の電子ファイルの定期的交換という新たな要求を意味する。

 

 特集「デジタルへ突き進む税務管理 第2回」につづく。


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