2018.05.11

IT企業に新たな課税 EUがデジタル税導入を検討

税の不公平を是正 2020年の施行を目指す

 

 欧州委員会は今年3月、新たなデジタル税の導入案を発表した。新税はIT系企業に対し、デジタルサービス税(DST)とデジタル法人税(SDP)の二つの課税導入を狙ったもので、2019年末までに採択し、2020年1月からの施行を目指している。焦点となっているデジタルサービス税はEU域内での売上高に一律3%を課税するもので、デジタル法人税については、これから詳細を詰めるとしている。

 

 従来の課税方式では、新たなデジタルビジネスモデルに対応できない上、国内に物理的な拠点を持たなくても収益を得るデジタルサービスの手法に対し、利益が創出される場所と税金が支払われる場所の間にミスマッチがあるとして問題視されてきた。

 

 実際、既存企業の平均実効税率が23.2%であるのに対し、デジタル企業のそれは9.5%と半分以下にとどまっており、「デジタル企業に比べて従来企業の税負担が重くなる傾向がある。現行制度は不公平で、公平な土俵に立っていない」との声が上がっていた。欧州員会はデジタル税の導入によって、EU各国に年間50億ユーロの税収が新たに発生し、各国のGDP比で配分すると、課税導入に賛成するフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の5カ国で、少なくとも年間34億ユーロの税収が生まれると見込んでいる。

 

売上高に一律3%のデジタルサービス税

 

 今後導入が検討されているデジタルサービス税については、総売上税の形をとり、現行税制の枠組みから逃れている特定のデジタル活動の売上げに適用され、一律3%の課税が検討されている。課税対象となる売上項目として以下のものが挙げられている。

 

  • オンライン広告の販売
  • ユーザー間の交流を可能にし、両者のモノやサービスの販売しやすくする仲介サービス
  • ユーザーが提供した情報から創出されたデータの販売

 

 ただし、中小のスタートアップ企業などには、大きな税負担がかからないように、課税対象企業は「全世界で年間売上高が7億5,000万ユーロ以上」「EU域内の売上高が5,000ユーロ以上」との条件が付けられており、損失を計上している企業についても適用外とする方針となっている。欧州委員会では、今回のデジタル税導入について、「利益が創出された場所で課税されるべきであるとする法人税制の最も基本的な原則に基づくもの」としている。

 

デジタル法人税は国内規則に準ずる

 

 一方、デジタル法人税(SDP)については、まずIT企業の場合、以下の3基準のうち、一つでも満たせば、課税対象と見なされる。

 

  • 1加盟国におけるデジタルサービスからの年間売上高が700万ユーロ以上
  • 1加盟国におけるデジタルサービスにアクセスする年間ユーザー数が10万人以上
  • 企業とビジネスユーザー間のデジタルサービスに係わる業務契約が3,000件以上

 

 このデジタル法人税はEU各国の国内法人所得税の規則が適用され、税率については各国で決定されることになる。最終的には一般的な法人税率とは異なるものになる可能性が高いと言われている。また、このデジタル法人税は、EU加盟国間の租税条約に優先するものだが、加盟国が第三国との間で租税条約を締結しているときは適用外となる。しかし、その場合、欧州委員会は現状のIT企業の活動に即した租税条約の変更を推奨する方針で、結局適用は逃れられないようだ。

 

米財務長官は反対 実施への道筋は流動的

 

 ただ、こうした欧州委員会の提案に対し、OECDは経済のデジタル化に関する課税の中間報告で、「暫定策の必要性、あるいは利点に関する(グローバルな)合意もまったく得られておらず、この施策はリスクや不都合な結果をもたらすであろうと多数の国が反対の意を表している」と反発している。

 

 また、スティーブン・ムニューシン米財務長官も「デジタル企業のみを対象にする提案には、それがどの国の提案であっても断固反対する。一部のデジタル企業は米国の雇用の創出や経済成長に大きく貢献している。新たに余分な税負担を課すことは成長を妨げ、最終的に労働者や消費者の利益を損なう」と反対の姿勢を示している。

 

 欧州委員会の提案は間もなく提出され、EU理事会の採択と欧州議会での協議が行われる。ただ、いずれの提案の実施にもEU加盟国の全会一致の賛成が必要であり、デジタル税の評価、実行策の具体的な検討もこれから。EU加盟国が各国の国内法に基づき、一方的にデジタル税の導入を進める可能性もある。一律実施への道筋はまだ流動的だと言えるだろう。


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