2018.05.29

米国が法人税減税へ EU各国も続く動き

米国は実効税率が18.9%に低下

 

 米国がついに法人税減税に踏み切った。今回の税制改革によって、法人税は35%から21%へ引き下げられ、限界実効税率についても34.6%から18.9%へ低下する見込みだ。影響を受ける欧州連合(EU)主要各国も米国の法人税減税に追随する動きを見せている。

 

 特に注目されるのが限界実効税率の比率だ。今回示された米国の税率18.9%は、G7平均の26.9%を下回る一方で、経済協力開発機構(OECD)の平均18.2%を若干上回っている。各国は、自国内に本社・支店、工場、研究所などの拠点を置く多国籍企業に対し、法人税率を引き下げたり、優遇措置を強化したりして、引きとめに躍起となっている。

 

 そもそも税収の減少と財政赤字が拡大する中、主要各国は多国籍企業の過剰な節税策に対抗するため、OECDを旗振り役に「税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting:BEPS)プロジェクト」を推し進め、税逃れに歯止めを掛けようとしてきた。EUも、加盟国の税務調査を行い、一部の加盟国に対しては、多国籍企業への徴税を強化するよう勧告してきた。

 

EU主要各国も法人税減税へ

 

 しかし、EU加盟国はOECDの取組みに今後も協力する一方で、今回の米国の法人税減税を受けて、各国が単独で法人税減税に踏み切る公算が大きいとみられている。英国、フランス、スウェーデン、ベルギー、その他の国も法人税率の引下げを発表しており、各国の税率は20~22%の範囲に落ち着きつつある。

 

 同時に優遇措置についても、主要各国は国際協調の動きに足並みをそろえつつも、投資の呼び込みを目的とした優遇措置を継続しようとしている。多国籍企業の研究開発投資や雇用の創出は多くの国々にとって魅力的なものであり、各国が法人税減税や優遇措置で多国籍企業の誘致を競い合う状態となっている。

 

 実際、EYの2018年グローバル税務ポリシーの見通しによると、調査対象の41カ国中14カ国で、研究開発投資を呼び込むために新たな優遇措置を検討しているという。

 

シンガポールやカナダ、中国も減税へ

 

 シンガポールでは、2018年2月に公表された予算に多くの優遇措置が盛り込まれている。同国では研究開発プロジェクトに投資する企業については、2019年から25年までの6年間で人件費などを対象に250%の税控除(従来は150%)を受けることができる。また、知的財産登録とライセンス導入に関するライセンス契約の初期費用10米万ドルに対しても、同期間で損金算入を2倍に引き上げる。

 

 他方、米国の法人税減税の影響を最も大きく受けるのが、カナダだ。これまでカナダは減税策の1つとして、北米自由貿易協定(NAFTA)を利用してきた。だが、今回の米国の税制改革で、米国がカナダの限界実効税率(20.3%)よりも優位に立つことになった。カナダは慎重な姿勢を示しているが、法人所得税率の引下げを含む全面的な税制改革へ動く可能性も出ている。

 

 このほか、世界第3位の外資受入れ国である中国でも、米国の税制改革を受けて法人税の引下げや付加価値税などの税制の見直しを図っている。

 

減税以外の税制も把握すべし

 

 ただ、米国の法人税減税に対し、EUが再検討を要請する動きも出ている。各国は今後、法人税の引下げに動く方向にあるが、多国籍企業は、法人税以外の税や例外規定についても検討すべきだろう。

 

 また、各国の限界実効税率の計算は、計算方法が州・地方税、又は物品税や給与税などの間接税を反映しているため、包括的な視点で考えることが欠かせなくなっている。さらに、各国のBEPSの実施状況、税率や優遇措置に影響する税制改正についても常に把握しておく必要がある。


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