2018.06.12

米国が減税政策で 国内企業の投資意欲を刺激

余裕資金が生まれ研究開発、M&Aが拡大

 

 米国企業が投資意欲を高めている。今回、新たな減税政策によって、米国企業は、現金同等物については15.5%、流動性資産では8%の税金を払えば、さらなる課税を受けることなく、海外に保有する国外所得を本国に送金できるようになった。さらに法人税率が35%から21%に引き下げられたことも加わって、自由にできる豊富な資金が生まれたため、各企業は、その資金をもとに米国内への投資を拡大させている。

 

 実際、米国企業は2018年の第1四半期で、合計約2,000億米ドルの自社株買いを行っている。ほかにも配当増による株主還元や、従業員のボーナスや賃金の引き上げを実施する企業も多くなっている。また、年間売上高が5億米ドルを超える企業では、生産体制の増強や、研究開発やM&Aへの投資も加速させている状況だ。

 

国内投資分は100%の即時償却が可能

 

 今回の減税政策をきっかけに、グローバル企業も米国への直接投資を加速させている。製造業を始めとした米国企業の第1四半期のM&Aの合計金額は、過去最高の5,590億米ドルを記録。とくに先端技術の獲得や市場拡大を目的としたM&Aが増加している。

 

 また、米国は国内企業の設備投資を促すために、今後5年間で企業が支出する投資分を直ちに100%償却できる税制改革を進めている。

 

 こちらの改革についても多くの企業が興味を示している。例えば、エネルギー分野の企業にとっては、バリューチェーン全体で多大な資本を必要とするため、投資負担も大きくなる。石油、ガスなどの天然資源の投資について、即時に100%償却できることは大きなメリットになるはずだ。

 

税源浸食防止税(BEAT)の導入で知的財産管理に影響も

 

 ただし、グローバル企業が今後、米国での投資を拡大するためには、2つの新たな税制についても考慮しなければならない。

 

 1つは、利息の控除を制限する税制が変更されることだ。そのため、多くのグローバル企業では、米国の子会社に資本を提供する方法や、企業間の負債を資本に転換するかどうかについて再検討に入っている。

 

 もう1つは、企業所得の海外移転を抑えるために税源浸食防止税が導入されることだ。欧州の製薬企業の場合、開発した医薬品の特許権を自国に保有していることが多い。そのため、米国の患者のために医薬品を生産する米国子会社は、デンマーク、フランス、ドイツ、英国などの本社にロイヤリティを支払っている。だが、今回の措置によって、米国に拠点を持つグローバル企業は知的財産などについても課税が強化されることになる。

 

 しかし、こうした新たな税制ができたとしても、グローバル企業が対抗策を講じたり、従来のビジネスのやり方を変更したりすることはないとの見方が強い。特許権の管理や保護の観点からも、事実上困難だからだ。さらに、米国の税務当局も、こうしたグローバル企業の懸念を把握しており、数カ月後に詳細な指針を策定する方針だ。

 

あくまで将来の需要と投資回収率予測を徹底すべき

 

 今後のグローバル企業の対応としては、まず投資を拡大する前に米国事業の財務構造を見直すことが先決だ。企業にとって重要なことは、あくまで将来の需要と投資回収率予測を徹底的に行うことにあるからだ。

 

 そして、投資費用の即時償却については、新しい控除からどのように利益を得られるのかを決定すべきだ。また、税源侵食防止税の導入で、知的財産など無形資産への影響を分析することも必要になる。さらに、資金の本国送金については、いかに効率的に米国に送金するかを検討しなければならない。州税についても、個々の州がどのように対応するのか、その動向を見守る必要がある。


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