2018.06.25

米国の減税政策で 新たな人材コストが発生

転勤費用などの損金算入が制限へ

 

 米国の減税政策の影響で、新たに人材コストの増加が懸念されている。今回の税制改革によって、法人税が21%に引き下げられたことにより、多くの企業で従業員のボーナスや賃金の引上げが実施されることになったが、その一方で従業員の国内外への転勤費用や出張費などで新たなコストが発生することがわかったからだ。

 

 問題は、新たな税制改革で役員や従業員の給与、株式交付だけでなく交通費、接待費、福利厚生費まで税法上の損金算入が制限されることだ。

 

 企業が米国外や他州へ従業員を転勤させた場合、新しい勤務地では個人所得税が割高になるケースや、州によっては転勤費用が所得控除の対象にならないところもある。

 

 そのため多くの企業では、従業員に報酬を追加して、転勤費用を手当てするなど人材コストが増加している。今後、企業では人材採用や人事異動での適切な対応が求められている。

 

各地に人材を派遣する企業に大きな影響

 

 中でも、大きく注目されているのが、転勤費用に関する税務上の恩典が廃止されることだ。企業はこれまで、転勤費用の一部、又は全額を支払う又は払い戻すときは、税務上の恩典を受けることができた。

 

 しかし、今回の税制改革で、個人所得税の所得控除、標準控除額の増額、住宅ローン金利の控除などが制限されるほか、従業員の転勤にかかる税金も増加することになった。米国のほとんどの州では通常、個人は州税と連邦税を支払っているが、州税率は各州で大きく異なっている。もし税率の高い州に従業員を転勤させると、人材コストの増加は避けられなくなる。

 

 とりわけ大きな影響を受けるのが、コンサルティング業務など、長期間のプロジェクトで各地に人材を派遣している企業だ。EYピープル・アドバイザリー・サービスのモハメド・ジャビール氏は、「今後数年で転勤費用が40%以上も増加するだろう」と指摘する。さらに、米国に入国する従業員の人材コストも増加する可能性がある。扶養家族に米国の社会保障番号が求められるため、保育料控除が適用されなくなるからだ。ほかにも、個人所得税免除の一時停止により、米国赴任後、これまでは申告義務の基準を下回っていた特定の非居住外国従業員、もしくは出張者に申告義務が発生し、人材コストが増える可能性がある。

 

各拠点で人材コストの最適化が必要になる

 

 では、企業はこうした転勤費用などのコスト増加に対し、どう対応すればいいのだろうか。ポイントになるのは、福利厚生制度の見直しだけでなく、採用や人事異動などの人材戦略、もっと言えば、会社の所在地についても見直しを図る必要があることだ。EYピープル・アドバイザリー・サービスのグローバルリーダーであるマイケル・ベルトリーノ氏は「人材の配置と各拠点の所在地が適切であるかどうか、州ごとに見直すことで人材コストを最適化することが重要になってくる」と強調する。

 

 そのため、多くの企業では、まず税制改革による人材コスト増をいち早く計算に組み入れることが求められる。どれだけコスト増になるのか。その影響を評価するためにモデル分析を行い、予算をつくっていく必要がある。また、今回の税制改革が将来のプロジェクト入札にどんな影響を与えるのか。さらに従業員の転勤費用コスト増を吸収できるように、別のコスト削減策も図っていくことが重要になる。


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