2018.08.07

各国政府が企業監視を強化 日本企業もグローバルな税務係争への対応が不可避に

税務リスクを管理する
一元化された戦略が必要

 

 世界中の政府が今、企業に関する情報の収集と共有を急速に押し進めている。BEPS(税源浸食と利益移転)や「税の透明性」の強化といった全世界的な潮流に伴い、各国は逼迫(ひっぱく)した財政を立て直すために、税制政策の大幅な見直しを図っているからだ。各国に拠点を置く日本企業も、これまで以上に税務当局と同等レベルでの可視化に加え、事前のリスク評価を含めたグローバルな税務管理体制の構築が不可避となっている。

 

 実際、海外のある多国籍企業では、世界中で多数の税務係争に直面している。例えば、その内容は、「ドイツ連邦中央税務局との移転価格係争」「アルゼンチン当局が営業許可書の取消しを検討」などが挙げられる。今、このような大企業をはじめとして、世界中で税務リスクが一段と高まっている。各国政府は、企業に関する多数のデータを収集・分析しており、税務問題の特定を急いでいる。今後、日本企業も本社がグループ全体の税務状況を可視化し、各拠点での税務状況の分析を行わない限り、将来的にさまざまな税務リスクにさらされる可能性がある。

 

 こうした各国の取組みは、税務当局のデジタル化の急速な進行によって、企業の国別報告書やマスターファイルの入手が容易となったことも大きい。各拠点での業務内容、売上げ、従業員数、資産の詳細をより包括的に把握できるようになり、税務当局は自国だけでなくグローバルな観点での可視性を獲得したことで、一国の税務係争が他国へと広がり、より一層激化する可能性が増している。

 

 これまで日本企業では海外事業の税務管理を海外子会社任せにする傾向が強かったが、BEPSによる国別報告書の導入によって、受け身の税務マネジメントは通用しなくなる。各国政府では、税務データの公開を検討している国もあり、今後は当局にリアルタイムで税務報告しなければならない可能性さえ生じている。EYのグローバル・インターナショナル・タックス・サービス・リーダーであるアレックス・ポストマ氏が次のように指摘する

 

「多くの企業では、税務リスクを管理するために一元化された戦略が必要になります。今後、税務係争が発生したとき、税務当局と自社の間で、問題を迅速かつ効率的に解決できる税務専門家の存在はますます不可欠となってくるでしょう」

 

日本企業が確立すべきは
「本社主導型税務マネジメント」

 

 企業の経営陣の多くも、こうした税務リスク対応への重要性を認識し始めている。EYグローバル税務係争・リーダーであるロブ・ハンソン氏も、こう指摘する。

 「税務リスクは、すでに経営幹部や取締役会の主な関心事となっています。いかに税務係争を回避するのか。また、実際に発生した係争をどのように迅速に解決するのか。こうした点に、今まで以上に関心が寄せられています」

 

 今後増加する税務リスクに、日本企業はどう対応すればいいのだろうか。まずは本社税務部門を拡充し、税務に関するトップマネジメントの関与を強化する必要がある。そのためには、適切なスキルを持った人材が適切な国や地域にいるかどうかなど、人材の再配置も検討しなければならない。さらに、税務部門のグローバルネットワークを構築し、経営戦略と合致した税務戦略の策定も不可欠となる。それには世界の法律、規制、税務行政の変化について全社的に把握することも忘れてはならない。

 

 日本企業は今後、「本社主導型税務マネジメント」を確立する必要がある。それがグローバルで成功するための条件だ。その意味で、EYの「コネクテッド・タックス」は、企業の戦略的パートナーとして、より幅広いビジネスとそのステークホルダー、税務当局、ビジネスモデルに変革をもたらすデータと情報を結び付けるサポートを提供している。EYのグローバル税務係争におけるネットワークは85カ国、1,300名を超える税務係争及び移転価格の専門家から構成されている。その多くが元政府官僚だ。こうした適切な人材と深い知識を基に税務係争に対応することが、今、急務となっている。


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