2018.09.06

新しい関税で変わる国際貿易に、日本企業はどう備えるか

貿易環境が激変、顧客離れのリスクも

 

 米国のトランプ大統領は、税制改革により、国内経済の底上げと投資の活性化を狙っている。これに対し、新たに導入された関税や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの脱退などがどう影響するかは不透明だ。2017年1月の就任以来、同大統領は「アメリカファースト」政策を押し進めているが、この動きは、ここ数十年にわたる世界的な自由貿易の流れを覆す可能性がある。

 

 実際、「アメリカファースト」政策には関税と貿易制度の改革も含まれ、日本を含む多くの国から輸入される鉄鋼・アルミ製品に追加関税が適用されることになった。これにより、米国内業界の一部生産施設が再開されるなど、一定数の業界関係者から支持を得ている。支持者らは、関税引上げに伴う製品値上げの国内経済への影響は低いとしているが、鉄鋼・アルミの大半を国内調達しているフォード・モーターは、この改革は米国製造業の競争力を損なうと声明した。この先国家間の減税競争が予想され、各国政府は、減税で投資を呼び込むと同時に、徴収方法の効率化などで税収を最大化させる必要に迫られるだろう。

 

 英国王立国際問題研究所が2017年11月に発表した同大統領の貿易政策に関する研究論文によると、米国のリーダーシップを欠いたまま、各国政府が経済成長と保護主義的な貿易・税制の均衡を図る中、企業にとっては激変する貿易環境にどう対応していくかが課題になる。EYグローバル・ジオストラテジック・ビジネス・グループのリーダー、ジョン・シェイムス氏は、これからは、税制や関税政策の影響を経営判断の要素に加えるべきと指摘した。暫定的な増税であっても仕入先を変える企業は多く、既存の顧客を失うリスクもある。

 

高まる貿易摩擦、自由貿易は後退するか?

 

 2017年1月、トランプ大統領はTPPから脱退することを発表した。代わって、リーダーシップを取ることになったのが日本だ。日本の安倍首相が主導する形で、カナダ、メキシコを含む11カ国が新たな「包括的かつ先進的環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」に調印することとなった。ロイター通信によると、この翌月トランプ氏は、今までよりも条件が「かなりよくなる」のであれば、再加盟を検討すると述べている。

 

 日本企業は以上のような不確定要素と市場の先行きの不透明感に対処しながら、最善の事業計画を立てる必要がある。しかしながら、EYが国際通貨基金(IMF)のデータを分析したところ、2008年の金融危機以降、新たな自由貿易協定への動きは鈍い。EYインダイレクト・タックスのアジア・パシフィックリーダーのエイドリアン・ボール氏によると、知的財産保護とサービス取引を主とする第2世代の貿易協定はいまひとつ広がりが見えない。

 

 こうした動きの中、2017年に4.7%だった商品取引の増加率は、2018年は4.4%、2019年には貿易緊張が投資判断に影響し4%まで落ち込むと、WTOは2018年4月に予測した。ロベルト・アゼヴェートWTO事務局長は、感情的な報復の応酬ではなく、自制的な対話による貿易紛争の解決を促している。国家間で協定を結び投資競争を行い、貿易紛争をWTO抜きで解決するような、大国にとって有利な状況も予測される。

 

 トランプ大統領は4月6日WABCラジオのインタビューで「少しは痛みを伴うが、最後に我々はもっと強い国になれる」と語ったが、米外交問題評議会(CRF)上級研究員のエドワード・オルデン氏は、「全世界にとっての問題は、貿易自由化がどのくらい進んでいくのかではなく、どのくらい後退するかである」としている。

 

今後、日本企業が取るべき対策は?

 

 このような地政学的およびマクロ経済のリスクは経営者にとって最大の懸案事項だ。その一方で、EYのグロースバロメーターの調査では、89%の回答者が不確実性の中にも商機を見出している。こうした状況を踏まえ、日本企業の取るべき対策としては次のようなことが考えられる。

 

 米国の新貿易関税と輸出入の停滞はサプライチェーンにダメージを与える可能性がある。今後の展開を見守り、状況に応じた戦略の見直しが欠かせない。米関税政策の動きについては、専門家による分析や知見を求める必要がある。

 

 市場の見通しが不透明な中、目まぐるしく変化する貿易環境に対応していくのは簡単なことではない。しかし、よけいなコストやリスクを抑え、新たな障壁を乗り越えるためには、貿易戦略と計画立案の手法を強化していくことも大切だろう。


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