2016.08.04

税務訴訟、減少傾向も大企業は積極姿勢へ

 企業や個人が提起する税務訴訟の数が、減少の一途をたどっている。国税庁が発表した最新のデータによると、2015年度の税務訴訟の発生件数は231件と、2014年度の237件から2.5%減った。2015年度の内訳は、所得税85件、法人税38件、相続・贈与税36件で、これらの合計が全体の約7割を占める。

 

 過去10年ほどの動向を見ると傾向はより顕著で、2004年度(計552件)との比較では58%の減少となる。

 

 要因の一つは、2013年の法改正だ。民主党政権時代、税務調査の透明化を図るため国税通則法が改正され、税務調査の対象や処分理由を文書で伝えることが義務化されるようになった。事務負担の増加で、租税当局が税務調査の対象を手堅い案件に絞り込んだ結果、追徴課税(更正処分)自体が減り、これを争う納税者も減少したと専門家は見ている。

 

 納税者の救済制度には、処分庁に対する再調査の請求及び国税不服審査所長に対する審査請求という行政上の救済制度と、裁判所に処分の是正を求める司法上の救済制度がある。処分を争う納税者は、まず行政上の不服申立てをし、それでもなお不服がある場合は裁判所に訴訟を提起する。

 

 昨年度、国税不服審査所長に対して申し立てられた審査請求は2,098件で、過去10年間のピークだった2012年度から42%減少した。

 

変わりつつある大企業のスタンス

 

 税務訴訟は少額のものが多く、全体的には減少傾向だが、大手に限れば企業はむしろ税務訴訟に積極的になってきている、と指摘する専門家もいる。

 

 「大企業の税務訴訟に対するスタンスが変わり始めたのは、2000年代から」と述べるのは、EY弁護士法人の北村豊弁護士。

 

 日本の企業は、伝統的に税務訴訟に及び腰と言われてきた。訴訟を提起することにより当局に睨まれて、次年度の税務調査に悪い影響を及ぼすのではないか、という懸念からだ。しかし、「物言う株主」に代表されるように、会社の取締役も株主の厳しい目を無視できなくなり、株主総会で追及される前に先手を打つべきとの考えが浸透しつつある。

 

 さらに、外資系企業は本国で税務訴訟に慣れているので、日本で税務訴訟をすることに躊躇しなくなっているといった側面もある。

 

 ここ2、3年の動向を見ても、日本IBM、ヤフー、ホンダ、日産といった日本を代表する大企業が税務訴訟を提起し、このうち日本IBMとホンダは勝訴している。

 

 過去には税務当局との馴れ合いから、訴訟を忌避してきた日本企業も変化しつつあり、争うべきは正々堂々と司法の場で争うといった企業が今後も増えるかもしれない。


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