2016.07.06

Brexit がもたらす税制の変化 関税へのインパクト

 世界に衝撃が走ったBrexitのニュース。英国でビジネスを展開するグローバル企業の多くは、すでに対策の検討を始めている。英国がEUから離脱することにより単一市場の枠外に出ることから、英国とEUの貿易に関税が発生することが予想される。また、関税以外の税制についても、付加価値税や物品税といった間接税に変化をもたらすと思われる。

 

 離脱プロセスで重要なのは、英国がEU条約第50条に従い、いつEUに離脱を通告するかだ。第50条によると、加盟国は欧州理事会に離脱を通知した場合、通知から2年以内にEUとの新たな枠組みを交渉することになっており、期限の延長といった特段の合意がなければ、この2年が経過するとEU加盟国でなくなる。

 

 移民流入の阻止と主権の回復が離脱派の主張だったが、英国政府は物品とサービスの自由移動を確保したいという意図がある。また、EU以外の国や地域についても自由貿易協定(FTA)の締結を急ぐだろう。

 

関税へのインパクト

 

 Brexitは、英国とEUのみならずEU以外の国・地域との貿易関係に変化をもたらすものであり、関税へのインパクトが特に大きいと見られている。

 

 現在、英国はEUのメンバーとしてEU関税同盟(EU Customs Union)に加盟しており、EU域内における物品の自由移動が保障されている。欧州連合関税法典(UCC: Union Customs Code)という共通ルールの下、域内の関税や通関手続きが撤廃され、EU以外の国々との貿易にはEU共通の関税、通関手続き、関税政策が導入されている。

 

 EUは、すでに53のEU外の国・地域との自由貿易協定を締結しており、それ以外に一部途上国に対する一般特恵関税制度も存在する。

 

 英国がEUから離脱した場合、特別な取決めを結ばない限りEU関税同盟からも外れることになる(トルコはEU加盟国ではないが、EU関税同盟に参加している)。これによりEUとの取引が輸出入と見なされ、関税の徴収・通関手続き・輸出入規制の対象になり、企業にとっては手間とコストの負担増を意味する。

 

 英国は、EUとの取引における物品の自由移動を維持するためには、交渉が必要となる。また、EU単位で締結しているあらゆる貿易協定から離脱することにより、EU域外の国・地域と貿易協定を再交渉しなければならない。

 

付加価値税、物品税も

 

 関税以外の間接税の分野で影響が予想されるのが、付加価値税(VAT)と物品税だ。現在、EU域内ではVAT指令により標準課税、軽減税率、免税、課税タイミング等に高度な共通ルールが適用されている。

 

 関税とは異なり、付加価値税は内国税と位置付けられており、英国もVAT指令を国内法に反映している。そのため、EU離脱によりVAT関連規則が即無効になる訳ではないが、EU加盟国でなくなることで適用されなくなる規則や目的を失う規則の改正が必要になる。

 

 例えば、EU域内で活動する英国企業が非EU企業になることで、EU居住者とは異なるVAT上の取扱いを受けることになり、EU域内事業者としての恩典が消滅し、EU各国でVAT課税事業者の登録や納税代理人の任命が必要となる。

 

 しかし同時に、英国はVAT指令に従う必要がなくなるため、税率や免税の取扱いに関して柔軟性が増す可能性もある。
 

 物品税についても同様のことが言える。物品税とは、特定の製品の製造又は販売に対して課される間接税で、たばこ、アルコール類、エネルギーと言った物品に課税される。

 

 EU規則により、製品分類の程度、最低税率、免税の許容、EU域内での生産・保管及び移動に係る一般的規則に関してある程度の統一が図られている。

 

 物品税も付加価値税と同様、英国の国内法で実施されているため自動的に無効にはならないが、今後EU物品税規則に従う必要がなくなり、柔軟性が増すことになる。

 

ビジネス戦略の練り直し

 

 以上の通り、英国のEU離脱は企業の間接税の取扱いに大きな影響をもたらすことが予想される。離脱交渉を後任に任せるとキャメロン首相は表明しているが、英国のEU離脱の影響を最小限に抑えたいEU各国は早期の離脱通知を英国に求めている。

 

 通知がなされた場合、与えられる猶予期間は2年。企業はその間に、サプライチェーンを始めとしたビジネス戦略の練り直しを急がなければならない。具体的には、1.英国における製造拠点の再配置の検討や欧州調達戦略の見直し、2.EU諸国における新たなVAT登録、納税代理人の任命、VAT申告の効果的手法の検討、3.VAT税率・物品税率の変更の可能性の検討とそれに則した販売戦略の再検討、4.ITシステム変更の検討、5.コンプライアンス体制の再構築、といった項目が考えられる。

 

 日本企業はEUへのゲートウェイとして英国に拠点を置くケースが多く、Brexitが現実のものとなった今、早急な対策が求められることになる。

 

※写真版権:irstone / 123RF 写真素材


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