2016.09.30

世界に広がる間接税シフトの今後を読む

 厳しさを増す財政状況に対応し財源の充実を図るため、各国は税の重点を直接税から間接税へとシフトしていることは、「世界はビッグデータで間接税の不正を防ぐ」の記事でも伝えた。ここに来て若干の変化も見られるが、長期的には間接税の拡大傾向は今後も続くと見る専門家は多い。

 

 付加価値税(VAT: Value Added Tax)制度が初めて導入されたのは1950年代。当時、付加価値税が国家の最も重要な財源の一つになるとは誰も想像しなかった。法人税を中心とした直接税が、膨張する国家予算を賄う主要財源と長く見られていたからである。

 

 変化のきっかけとなったのは、2008年の金融危機だ。多くの国は、景気の冷え込みによる法人税収の急激な減少に苦しめられた。このことにより間接税が税収不足を補う財源として注目されることになり、付加価値税や商品サービス税(GST: Goods and Services Tax)といった消費税の税率が特に欧州で大幅に引き上げられることになった。
 

拡大傾向、続く方向

 

 今日ではVAT、GST、売上税を含めた消費税がOECD(経済協力開発機構)加盟国における税収の約3分の1を占めるまでに至っている。

 

 最近の動向を見る限り、間接税の拡大傾向が鈍化しているのは確かだ。OECD加盟国に限ると、付加価値税の税率は短期的には概ね横ばいに推移すると予想されている。EUでは、ルーマニアが税率を24%から20%に引き下げたことにより、加盟国の平均税率はむしろ下がっている。イスラエルもVATの標準税率を18%から17%に引き下げた。

 

 しかし、このような動きから直接税から間接税へのシフトが終わりつつあると結論付けるのは早計だ。税率をとっても、課税ベースをとっても、間接税のトレンドは縮小ではなくむしろ拡大にある。 

 

酒、たばこ物品税も

 

 最近でもオーストリア、ベルギー、エストニア、ギリシャやノルウェーのようにVATやGSTの税率や課税ベースを拡大した国もある。

 

 また、多くの国で酒、たばこ、鉱油の物品税が今年引き上げられたことも世界の間接税シフトを物語っている。

 

 たばこ税の増税は先進国から新興国まで広がりを見せ、最近ではベルギー、フィンランド、アイルランド、ラトビア、ロシア、ウクライナとザンビアで引き上げられた。酒税も、ベルギー、ラトビア、マダガスカル、ロシア、ウクライナで増税された。

 

中国からインドまで

 

 現在、VAT/GST制度が導入されている国は160以上あり、今後も増えると見込まれている。GDP世界第2位の中国も増値税(消費税)改革の真っ只中にあり(「中国・増値税改革、企業への影響」参照)、インドも独立後最大の税制改革となるGST導入に向けた憲法改正を実現した(「インド、間接税改正法案が成立 歴史的税制改革へ前進」参照)。

 

 日本でも消費増税10%への引き上げが2019年10月に先送りされたとは言え、政府は軽減税率やインボイス制度の導入等、消費増税への地ならしが進んでいる。
 

関税ルールは複雑化

 

 一方、間接税の主要な部分を占める関税については、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定を始めとする複数国・地域をまたぐメガFTA(自由貿易協定)締結の動きが加速している。これは一見、関税が引き下げられる方向に進んでいるようにも見られるが、FTAを通じた関税撤廃の恩恵はあくまで各FTAの複雑な適用条件を満たした時に実現されるものである。

 

 これについて、EY税理士法人の大平洋一パートナーは企業に警鐘を鳴らす。「現在、世界各国でFTAやEPA締結の動きが加速しているが、これにより関税撤廃のルールが複雑化の一途をたどっている。国際的にビジネスを展開する企業は、FTA利用の管理をしっかりやらなければ、当局による追徴課税のリスクに晒され、むしろ注意が必要だ」と指摘する。


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