2016.11.24

Brexitから5か月、見えてきたそのインパクト

 英国のEU離脱の賛否を問う国民投票から約5か月。マーケットは直後の波乱から落ち着きを取り戻し、経済への影響は今のところ限定的で、当初の衝撃は収まりつつあるようにも見える。しかし、Brexitの正念場はむしろこれからであり、いまは長い道のりの単なる出発点に過ぎないと多くの専門家は言う。

 

 影響は税を含め経済全般に及び、その範囲は英国とEUだけに留まらない。グローバル企業は、前例のない規模と速さの変化に対応しなければならず、その手腕が試されることになる。

 

経済的インパクト

 

 景気への影響に関しては、短期的に景気減速をもたらすというのがコンセンサスだったが、いまのところ大方のエコノミストの予想に反して英国経済は堅調さを維持している。

 

 経済協力開発機構(OECD)は、今年上期の予想を上回る好況と8月のイングランド銀行(中央銀行)の金融緩和に受けて、2016年通年の経済成長予測を引き上げた。国民投票前の数字から0.1ポイント高い+1.8%の成長を予測している。英国経済の柱であるサービス業や小売業の好調が経済を下支えしている。

 

 このような状況を見る限り、Brexit前の悲観的予想が現実のものになる可能性は低いが、経済的リスクが払拭されたとは到底言えず、国民投票の英国及び世界経済への長期的影響には不確実性が伴う。ちなみに、OECDは2017年の経済成長率を2016年よりも低い+1%の見通しを立てている。

 

離脱への道のり

 

 英国のEUからの離脱はEU条約(リスボン条約)第50条に従い、欧州理事会に通告しなければ正式な離脱交渉は始まらない。また、通告から2年以内に脱退協定を結ばなければ通告の効力は消滅する。

 

 メイ首相は、2017年3月末までの交渉開始を目指していたが、そのシナリオが崩れつつある。11月上旬、高等法院はEU離脱を通知するために、政府は議会承認を得なければならないという判決を下したからだ。これにより、交渉の開始時期が大幅に遅れる可能性が出てきた。

 

 さらに、2017年は欧州にとって選挙イヤーになる。3月にオランダの総選挙、4月~5月にフランス大統領選挙、9月にドイツの連邦議会選挙が行われるため、英国政府は欧州全体の政治動向を睨みながら離脱プロセスを進めることになる。

 

税環境の変化

 

 現時点で何がどう変わるか予想するのは困難だが、Brexitにより税制が大きく変わるのはほぼ間違いない。

 

 英国は現在、他のEU加盟国からの輸入品に共通関税(Common Customs Tariff)を適用し課税している。しかし、この制度はEUが運用しているものであり、英国が引き続き輸入品に関税をかける場合、新たな関税制度を法整備しなければならない。

 

 日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)は、英国国内法で制定されているため、現行制度が維持されると見られている。ただし、納税者はこれまでのように欧州司法裁判所に不服申立てできなくなる。また、英国政府はこれまで以上に自由に付加価値税の税率や対象を設定することができる。

 

 また、英国がEUから離脱することにより、租税回避防止に関する指令(Anti-Tax Avoidance Directive)や国別報告書(CbCR)といったEUが主導する税のイニシアチブから外れることになる。もっとも、英国はこれらのイニシアチブを支持してきた経緯があり、同様の制度の法制化を進めると見られる。

 

企業の対応

 

 企業への影響は、英国におけるビジネスの規模によって異なるのはもちろんだが、たとえ小規模でも影響は避けられないと専門家は指摘する。そこで、企業への影響のポイントは、以下の4つになる。

 

貿易:EU向け輸出入、サプライチェーン、市場アクセス、顧客への影響

 

人事:熟練労働者・非熟練労働者の確保、賃金の上昇または下落圧力、既存社員への影響

 

規制:モノ・サービスに関する規制の変更、ビジネスモデルへの影響、投資環境の変化

 

政府の政策:EU研究資金支援へのアクセス、税制全般、投資インセンティブに関する政府方針の柔軟性の変化

 

 今後グローバル企業は、英国とEUの動向をウォッチしながらその影響を分析し、柔軟にBrexit対策を打ち出さなければならない。


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