2017.01.27

日本で高まる税務戦略の重要性

 これまで受け身だった日本の企業税務にいま、変化が起きている。税務を経営戦略の一つと捉え、競争力の強化と経営指標の向上という観点から、従来の「守り」だけではない「攻め」の税務に転換する企業が増えてきている。そんな中、注目を集めているのが「キャッシュタックス プランニング」だ。

 

 キャッシュタックス プランニングを通じた納付税額の低減により、企業は余剰資金の創出、フリーキャッシュフローの増加とともに、主要な経営指標の一つである株主資本利益率(ROE)の向上を実現し、税務の観点からの国際競争力の強化を達成することができる。

 

 税務戦略を経営戦略と位置付けている企業の割合は41%。日経新聞が昨年12月19日付の記事で発表した調査だ。「今後位置付ける予定」とした国内企業を合わせると約6割近くが税務戦略を織り込んだ経営を目指している、と記事は指摘している。

 

注目の背景

 

 背景にあるのは、近年の外国人株主の増加だ。日本企業における外国人株主の持株比率が約3割超まで達している現在、外国人株主によるROEやROA(総資産利益率)等を指標とした株主還元を重視した厳しい目を経営陣も次第に無視できなくなってきている。

 

 高い実効税率もネックだ。近年の税制改正に伴い、日本の法人実効税率は約30%へと次第に低下してきているものの、諸外国と比較してみた場合、未だ高い水準にあるのは事実であり、国内企業が依然不利な状況に置かれていることに変わりはない。

 

 一方で、昨今注目を集めているBEPS(税源浸食と利益移転)についても、十分留意する必要がある。

 

 一部の海外多国籍企業による租税回避行為を封じ込めるためのBEPS行動計画に基づく各国における税制改正により、グローバル展開する日本企業は今後より一層の情報開示が求められ、これまで海外子会社任せにしがちであった海外子会社の税務管理を本社主導で行う必要性が更に高まっている。

 

税務戦略のメリット

 

 激しい競争環境と株主からの厳しい要求に晒されている国内企業にとって、経営指標の改善は待ったなしだ。昨今、多くの日本企業における経営課題として、例えばROEの向上やキャッシュフローの効率性の改善、有利子負債の圧縮等が挙げられるが、これらの経営課題の達成にキャッシュ・タックス・プランニングはその一助になると専門家は指摘する。

 

 また、キャッシュタックス プランニングは、いわゆるグローバルでのサプライチェーンや資本構造の見直しといった大掛かりな取り組みに限らず、日本国内のみ・個社ベースでも取り組むことが可能であり、限られた人手でかつ身近なところから始めることができるという点も注目すべきポイントだ。

 

 例えば、国内グループ会社の法人税申告書の精査を通じて未利用の税額控除制度を発見し、法人税額の削減に寄与したというケースや、資本政策の見直しによる均等割や事業税(外形標準課税)などの地方税の削減、行政との折衝を通じた固定資産税評価額の低減に成功したというケースもある。

 

 「平成29年度税制改正大綱には、日本企業の経営陣に対する中長期のインセンティブを加味した役員報酬制度設計や、IoT・ビックデータ・AIなどを活用した第4次産業革命型の高付加価値型サービスの開発を後押しするための関連税制の改正が盛り込まれており、これらの制度を経営戦略に合致する形で最大限活用することにより、連結実効税効率の改善と共に、経営課題の達成にも寄与することが可能です」とEY税理士法人の阿久津隆一パートナーは述べている。


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