2017.02.14

平成29年度税制改正でタックスヘイブン対策税制強化へ

 自民党と公明党で議論され、メディアでも注目を集めた所得税の抜本改革は見送られ、税制改革が骨抜きになったとの指摘もある平成29年度税制改正。しかし、この改正には企業に大きな影響を与える見直しが盛り込まれている。「タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)」の見直しだ。

 

 富裕層やグローバル企業による税逃れに世界中で厳しい視線が注がれる中、日本の財務省もこの制度の強化を進めている。

 

「タックスヘイブン対策税制」とは、国内企業が低税率の海外子会社に所得を移転することにより日本における税負担を不当に軽減することを防ぐため、一定の要件に該当する海外子会社の所得については国内親会社の所得と合算して課税するものである。

 

 焦点となったのは、「トリガー税率(実質租税負担割合)」の取り扱い。現行制度では、入口基準としてトリガー税率が課税・非課税の分水嶺として用いられ、現地国における実効税率が20%未満の外国子会社の所得に対してタックスヘイブン対策税制の合算課税が適用されている。

 

「ペーパーカンパニー」等の合算課税

 

 これまでは、外国子会社の実質租税負担割合が20%以上であれば、企業は何も悩む必要がなかった。しかし、今般の税制改正において「入口基準としてのトリガー税率」は廃止されることになる(企業の事務負担増大に配慮して、最終的な制度適用免除基準としての「税率基準(20%あるいは30%)」は残されている)。

 

 「ペーパーカンパニー」や「実質的なキャッシュボックス」といった新たな企業概念が登場し、これらのペーパーカンパニー等にかかる合算課税制度が創設される。改正後は、外国子会社の実効税率が20%以上であっても、ペーパーカンパニー等に該当すると合算課税の対象になる(実効税率が30%以上であれば対象にならない)。

 

 現時点で「ペーパーカンパニー」の定義は政府与党の税制改正大綱等で示されているものの、限界事例は明らかではない。しかも、外国子会社がペーパーカンパニーと認定され、一旦タックスヘイブン対策税制の対象になると、合算額が巨大になる可能性があるからやっかいだ。

 

 日本企業は、これからは「実質実効税率20%」という数値基準ではなく、「ペーパーカンパニー」という定性的な企業概念基準への対応を準備しなければならない。

 

受動的所得の範囲拡大

 

 もう一つ、今回のタックスヘイブン対策税制の見直しで注目されるのが、受取利子や配当・キャピタルゲインといった「受動的所得(パッシブインカム)」の扱いである。

 

 現行制度上、外国子会社の税負担割合が20%未満であっても、事業基準や実体基準といった適用除外基準をすべて満たした場合には、全ての所得について合算課税の対象とされるわけではなく、当該子会社に一定の「資産性所得(受動的所得)」がある場合に限りその所得についてのみ合算対象となる。また、その合算対象とされる受動的所得の範囲もきわめて限定的であった。

 

 今回の改正で対象となる「受動的所得」の範囲が大幅に拡大された。これまで対象とされなかった貸付金にかかる受取利子や一定の配当金・キャピタルゲインも含まれることになり、合算課税所得が巨額になる可能性がある。外国子会社の所得の種類や金額について、一層の注意が必要となろう。

 

企業に求められる対応

 

 新制度は、平成30年4月から導入されるため、まだ時間的猶予があるように思われるが、企業は対応を急ぐべきと専門家は指摘する。求められる対応は、1. 課税リスクの予想・特定・抽出、2. 課税リスクへの対処法・予防策の策定・実行、3. コンプライアンス(申告義務等遵守)に関する適時・適切な対応に大別され、特に1と2は早急な対応が必要である。

 

 1に関しては、海外子会社等にかかる情報収集が必要であり、将来の課税リスクの抽出・予想が求められる。特に、これまでの制度下では問題がなかったが、改正後は問題になるようなケースに注意が必要だ。

 

 2については海外子会社の企業実体・機能の変更、合併等を通じた組織再編による企業実体・機能の変更、グループ内会社間の資本関係(持分割合)の変更といった、より大がかりな対応が必要になるかもしれない。

 

 その上で、コンプライアンス対応である3については、親会社の事務負担が増えると予想されており、事前に準備する必要のある文書の確認や申告業務の効率化を検討する必要がある。

 

 いずれにおいても、企業はタックスヘイブン対策税制への対応を自前ですべてできるか否かを検証し、必要であれば外部のエキスパートの力を借りることも視野に入れなればならない時代に来ている。


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