2017.09.13

消費財メーカーは既存のビジネスモデルを疑え

 イノベーションは、これまでにない力を消費者に与えている。いつ、どのように物を買うかの選択の幅が飛躍的に広がり、消費者はより厳しい目で商品を選択するようになった。

 

 食品に代表される安全性の問題やフェアトレードの意識の高まりにより、消費者が求める商品は、地域的(local)、真正(authentic)、透明(transparent)、トレーサブル(traceable)、倫理的(ethical)といった特徴が重視される。

 

 消費財ビジネスに関わるグローバル企業は、これまで以上に消費者に近いところにいなければ、競争に負けてしまう。では、柔軟性と効率性と管理可能性を兼ね備えたオペレーティングモデルや税務モデルをどうやって構築すれば良いのか。

 

 グローバルな消費財メーカーは、伝統的に「大は小を兼ねる」という前提でオペレーションを構築してきた。このビジネスモデルは、税務の面からも最適と見なされてきた。

 

 しかし、イノベーションが既存のビジネスモデルに破壊的変化をもたらしている今、単一的なグローバル商品は急速に魅力を失いつつある。同時に、ライバルとして台頭しているローカル企業の多くは消費者により近く、スピード感と柔軟性をもって商品を展開している。

 

 税務環境の変化も、既存のオペレーティングモデルが妥当かどうかの再考を促している。各国の税務当局は、いままで以上に商品の価値がどこで、どのようにして生み出されているのかを重視するようになり、ローカルレベルでの無形資産にも注目しているのだ。

 

規模を追うべきか

 

 スケールメリットが顕著に現れる分野も確かにある。特に消費者と直接関わりのないバックオフィスや高度な技術開発が必要な分野では、集約型のモデルのほうが理にかなっていると言えよう。

 

 他方、スケールメリットを犠牲にしてまでも、消費者との関係性をより近いものにすることにより、より大きなメリットを享受できるケースもある。例えば、特定のマーケットに特化した商品の開発、価格決定、マーケティング、販売促進などは地域に根差した分散型のビジネスモデルが有効な場合が少なくない。

 

 企業は、ビジネス戦略を練る上で、「競争的優位性はどこから来るのか?」「マーケットで勝ち抜くための最適のモデルは?」といったことを自問しなければならない。

 

最適なモデルとは?

 

 激化する競争で勝利者となるためには、既存のビジネスモデルに捕らわれない柔軟かつ斬新な発想が求められる。均質、単一、平準といった価値から、より特化し、カスタマイズされた価値の創出がライバルに一歩抜きんでる近道となる。

 

 そこで、税務の観点からは、何が求められるのか。価値の創出というのは、特定の集約された場所で行われるのではなく、極めて重層的かつ複合的に実現され、商品の種類や地域によっても異なる。その上で、次のような問いに答えなければならない。

 

  • 変わりゆくビジネス環境において、「既存モデル」が果たして有効か?
  • 既存のオペレーティングモデルが自社のビジネスにとってユニークなものである場合(そのため比較評価が難しい場合)、ベストな移転価格戦略とは?
  • 新たなビジネス戦略は直接税リスクを高めるか?未公開株式や源泉徴収税のリスクをどう管理するか?
  • 新たなモデルにおいて、知的財産をどのように開発、運用するべきか?
  • 社内の各部門、資産、利益を集約するため、どのような組織体を構築すべきか?
  • 新たな移転価格モデルやトランザクションフローが直接税、間接税負担にどのような影響を及ぼすか?
  • 新たなタックスモデルにおける資金調達の役割は?自社の財務部門が分散型のオペレーティングモデルをサポートするのに十分か?
  • データやインテリジェントオートメーションといった非人的部門の貢献をどのように反映させるか?
  • 成長を持続させ、変化に適応するためオペレーティングモデルの見直しも必要となる。新たなモデルの中で、柔軟性をいかに構築するか?
  • タックスモデルやオペレーティングモデルを変更する場合、既存のインセンティブや事前確認制度がどこまで有効か?

 

 ビジネスや税務環境の変化が著しい時代、グローバルな一貫性と地域的自由度を兼ね備えたオペレーティングモデルとタックスモデルを構築し導入するのは、複雑かつ至難の業だ。「グローバル」と「ローカル」のバランスが取れた視点が、これからますます重要になってくる。


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