2018.11.14

海外子会社における税務調査にどのように対応するべきか

 日本に存する会社が国税局による税務調査を受けるように、多国籍企業グループにおける海外子会社もまた、当該国の税務当局による税務調査を受ける。 しかし、とりわけ日系多国籍企業グループにおいては、海外子会社における税務調査あるいは税務当局とのやりとりについて、本社の経理・税務部門が十分な注意を払っているとは言えない場合が多いと考えられる。

 

 どうして海外における税務調査に注意が払われていないのか。企業グループによっては、海外における税務当局とのやりとりは子会社に対応を一任しており、税務調査がスムーズに終了したかどうか、あるいは追加で納税することとなったコストとしての税額に専ら関心を払っている場合もあると考えられる。

 

 また、たとえ海外子会社における税務調査の過程をしっかりと把握することの重要性を認識していても、本社の経理・税務部門のマンパワー不足、あるいは海外における税制、税務行政及び税務調査プラクティスに詳しくないために、状況の十分な把握が難しいという事情もあるだろう。

 

海外における税務調査がもたらすリスク

 

 しかしながら、多国籍企業グループにとって、本社所在地における税務調査のみならず、海外における税務調査が企業グループ全体にとっての税務及び他のビジネスリスクになっている。

 

 3つ理由を挙げるとすれば、第1に、新興国の税務当局はいずれも国際課税を中心としたルール整備及び人的資源の強化を通じて多国籍企業に対する税務調査及び課税を強化している点がある。あるASEAN諸国の財務大臣は「アグレッシヴなタックス・プランニングは多国籍企業のコア・ビジネスの一部」と発言していると報じられており、別のASEAN諸国の税務当局トップ経験者は、「OECDのBEPSプロジェクトは常に多国籍企業からの徴税強化のための取組みとしてとらえられている」と述べている。

 

 第2には、税務当局同士が国境を越えた情報交換や協力を強化していることである。国際的な税務情報交換に係る国際基準の実施に取り組むOECDの透明性及び情報交換に係るグローバルフォーラムは2018年11月現在、154の国・地域が参加している。税務当局相互の情報交換ネットワークは文字通りグローバルになっていると言っても過言ではない。

 

 三番目の課題は、多国籍企業であることに起因するグループとしてのガバナンス及びコントロールの難しさである。前述したように、とりわけ日系企業においては、税務調査を含む税務当局対応の多くを海外子会社にまかせているケースが多いと考えられる。企業グループ内においても、買収などによって新たにグループに加わった子会社の場合、以前からの経理・管理部門担当者がおり、本社の関与がより希薄になりがちである。本社と子会社間の連携や理解が十分でないために課税措置に至るというケースもあり得るだろう。

 

本社主導の税務リスクコントロールの必要性

 

 海外子会社において税務リスクが高まっている現在、多国籍企業はどのように対応すればよいのか。前述したように税務当局間の協力が活発化している現在、企業グループもまた、本社と海外子会社間の連携の強化――とりわけ、本社が海外税務当局との関係も含めて税務リスクを適切にコントロールすることが求められている。多国籍企業がグローバルな税務リスクを適切にコントロールするためには、税務当局との関係マネジメントを含めたグループとしてのストラテジー、ガバナンスの基本原則が策定され、グループ内部統制として機能していることが前提となることが予測される。

 

 多国籍企業にアドバイスするタックス・アドバイザーもまた、個々の国ごとにアドバイスを行うだけではなく、国境を越えて適切に連携した上で、企業グループ全体のリスクコントロールの観点から最適なアドバイスを提供することが求められていると言える。


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