2017.06.20

移転価格、リスク回避のための5つのステップ

 移転価格は、紛争が増加する新時代に突入した。そこで、グローバル企業には、移転価格対応で攻めの戦略が求められている。

 

 EYが2016年に実施した調査によると、36カ国17業種の移転価格担当役員623人が紛争増加に直面していると答えた。



 この背景にあるのが、高まる透明性への要求だ。租税回避への批判を受け、各国政府がその取り組みを強める中、移転価格の国際ルールはより包括的なものへと変貌を遂げている。

 

 その中心にあるのがBEPSプロジェクト。多国籍企業は、これまで以上に詳細な税務情報を提供しなければならず、その多くがローカルの企業活動に関するものだ。

 

 情報をより多く開示すれば、当局による調査の項目が増え、これにより税を徴収する側の厳しいチェックにさらされることになる。

 

 そこで、企業は以下のような課題を検討しなければならない。

 

  • 税務リスクにどのような変化があり、どの分野で税務紛争が顕著になっているか?
  • 透明性とコンプライアンスの関係性に影響を及ぼすようなルール変更はどこにあるのか?その変更はどのように解釈されているか?
  • 移転価格戦略で先を行くには、積極的に業務をどう変えていかなければならないか?

 

租税回避の議論

 

 世界的な租税回避の議論において、移転価格が最もホットで物議をかもすトピックになったことも、リスク回避を後押ししている要因となっている。

 

 近年、企業が移転価格を使って税逃れをしていると主張するメディアや政治家、活動団体が出現し、彼らによって移転価格がさらに注目を集めるようになった。

 

 税務当局にとっても情報の可視化が進む中、徴税の実績を上げるため、グローバル企業にさらなる圧力をかけているという点も無視できない。

 

BEPS時代の情報開示

 

 2016年10月の時点で、80を超える参加国のうち44カ国がBEPSの一部または全部をすでに導入しており、これによりルールの解釈における食い違いが生まれつつある。

 

 このような状況の下、企業はさらなる情報開示で対応しなければならず、移転価格とビジネスのオベレーティングモデル全体との整合性も示さなければならない。

 

 同時に、開示するものに不都合な情報が含まれないようにするためにも、能動的な移転価格ポリシーを採り入れなければならない。

 

 企業社会の一員として、移転価格ルールの条文をただ守るだけではなく、その趣旨に則ってビジネスをしていることを示さなければならない。

 

 移転価格リスクは、レピュテーションリスク(評判に関するリスク)に直結しかねないことも考慮しなければならない。

 

 逆に言えば、税を通じた社会貢献をステークホルダーのみならず、世間一般に示すことができれば、マイナスの芽を大きなプラスへと転換できることもできる。

 

 移転価格のプロフェッショナルは、新しいBEPS時代に対応するため、具体的なアクションを起こさなければならない。そこで、5つのステップを提案したい。

 

1. 社内における移転価格のリスクアセスメントを実施する
  移転価格の変化が明らかになるにつれ、既存のモデルは新しいルールに対応できないかもしれない。どこにリスクが潜むかを検証することにより、税務調査のリスクにどう対応するか、ベストアプローチを検討し、決定することができる。

 

2. リスク回避とコンプライアンスの活動をアップデートする
  新しい戦略やアクションは、選択的ではなく、必須だ。これは、社内ドキュメンテーションの刷新から、移転価格モデルの変更に至るまで幅広い分野に及ぶ。社内の移転価格モデルを再構築することにより、例えば知的財産の保護が高まるといったメリットもある。

 

3. 包括的な税務調査対応を構築する
  税務調査のリスクが、世界中で高まっている。その場しのぎで一貫性のない対応による不都合な結果で、別の国において立場が不利になる可能性がある。充実して税務調査対応を構築していれば、自社の移転価格モデルが毀損されることはない。税務リスクは特に高い地域においては、二国間や多国間の移転価格合意を検証することも有用だ。これには時間と労力が必要だが、将来の移転価格リスクの芽を摘むことができる。

 

4. 恒久的施設(PE)を再検証する
  PEのリスクを軽く見てはならない。企業の恒久的施設がいまの厳しいルールで評価された場合、自社の税ポジションに大きな影響が予想される。PEルールが厳格化されたことを意識しなければならず、過去に認定外だったものが認定される可能性があることを意識しなければならない。

 

5. ITシステムを再構築する
  移転価格のITや税務申告システムのツールを検証する。時限的、個別的調整に頼るのは、エラーのリスクが高く、事後的修正についても特定の時期の財務状況を正しく反映しない財務諸表が作り出される結果になる。これにより、移転価格に関する疑義を高めることになりかねず、詳細な税務調査を招くことも否定できない。


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