2017.08.02

デジタル化の波は日本へ 国税庁が10年後未来像を公表

 デジタル化の波が日本の税務行政にも押し寄せている。国税庁は6月23日、人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)を活用した税務行政の未来像を描いた資料を公表した。

 

 「税務行政の将来像 ~スマート化を目指して~」には、おおむね10年後に目指すべき税務行政のイメージが示されている。

 

 背景には、IT技術の急速な進展や、多様化、国際化する資産運用でますます複雑になる調査・徴収の現状がある。国税職員が減少する一方で、所得税の申告件数は年々増え続けており、デジタル技術を活用することで、より高度な専門性が求められる業務に人材を集中することができる。

 

 国税庁が掲げる「スマート税務行政」には、(1)納税者の利便性の向上、(2)課税と徴収の効率化・高度化、といった2つの施策が提示されている。

 

(1)には、税務相談におけるメールやチャットの活用がある。現在、面接や電話で行われている税務相談にIT技術を導入することで、納税者の利便性を高める。相談内容によってはAI技術を駆使し自動回答を運用することで、相談時間を短縮することを目指す。

 

(2)の例として、調査の必要性が高い大口・悪質な案件をAIで的確に選定することが掲げられている。富裕者や多国籍企業による租税回避が批判される中、滞納者情報と国内・海外の財産情報を自動的にマッチングするシステムを開発することで、租税条約に基づく情報交換の要請に活用できる、と国税庁は提案している。

 

進むデジタル化に課題も

 

 税務行政のデジタル化は、納税者の利便性向上につながると同時に、新たな課題も突き付けている、と専門家は見る。

 

 「地方税当局や、他の政府機関との情報やシステムの連携は、納税者のコンプライアンス負担軽減という観点から歓迎されるが、納税者としても税務当局がこれらの情報を一貫して管理、分析するということについて、きちんと対応できるようにする必要がある」とEY税理士法人のカーンズ裕子エグゼクティブディレクターは指摘する。

 

 その上で、企業が納税申告手続きの電子化によるコンプライアンス業務負担軽減のメリットを享受できるよう、社内における税務プロセスの効率化、会計データの効率的活用やRPA(ロボット技術による業務の自動化)などの活用によるオートメーションなどに取り組むことが重要とカーンズ氏は言う。

 

相手は国税庁のみならず

 

 海外で事業展開する日本企業は、国税庁のみならず世界各国の税務当局を相手にしなければならない。大きな流れは同じでも、提出データの要件等は国によって違う。

 

 世界の多くの税務当局は、納税者の会計データの定期的提出やデジタルインボイスの導入を進めており、デジタルインボイスについては、メキシコ、中国、ロシア、ブラジルがすでに義務化している。各国で間接税やPE(恒久的施設)規定を含めた税制が頻繁に改正される中、海外における税務コンプライアンスはますます複雑化している。

 

 アメリカ企業の多くが、メキシコの子会社の税務当局へのデータ提出義務に多大な時間と労力を費やしていることからも分かるように、多国籍企業の税務当局対応が経営の大きな負担になっていることは無視できない。

 

 現在、外国における税務コンプライアンス業務を子会社任せにしている日本企業が少なくないが、これからは海外子会社と連携を取りながら、本社主導で効率的に国内と海外のデータ生成、収集、管理の体制を作ることが求められる。

 

 国税庁が描く税務行政の未来像は、デジタル時代の税務戦略を考える良いきっかけになるかもしれない。


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