2019.01.22

グローバル・タックス・ガバナンスの必要性

 多国籍企業が直面する税務リスクは、単に本社所在地における税務当局との関係に限らず、海外子会社における税務当局との関係も含まれる。そしてグループとしてのグローバル税務リスクを適切にコントロールするためには、多国籍企業自身が税に向き合う基本的な考え方や方針を明確化した上で、税に関して本社と海外子会社とが適切に協働するためのガバナンス体制が構築、執行されていることが重要な前提となる。

 

 各国における新しい国際課税ルールの実施、税務当局間の情報交換の強化、特に新興国における積極的かつ予測可能性の低い税務執行など、国際的な税を巡る環境は厳しさを増しており、税務リスクは一カ国ごとに単体で存するのではなく、グループ全体としてのグローバル税務リスクとしてとらえる必要がある。多国籍企業においては、税務調査を中心とした税務当局との対応について、海外子会社に対応を一任せず、そのプロセスについてグループとしての税務リスクコントロールの観点から本社が適切に関与していくことが望ましい。

 

ガバナンス体制の必要性

 

 海外子会社における税務調査対応に本社が十分な注意を払わないとどのようなリスクがあるのだろうか。例えば、グループ内取引に係る移転価格税制の調査において、海外子会社による税務当局への説明あるいは資料提供が本社との十分な打ち合わせなに行われることにより、課税を招いたり、あるいはその後の二国間事前確認(APA)協議の障害となるケースがある。移転価格に関しては、国別報告書(Country-by-Country Report)などのグローバルな文書化制度の推進により、子会社所在地国の税務当局がグループ全体の情報にアクセスできるようになっているため、税務調査に際しては本社と子会社との密接な連携がこれまで以上に求められている。

 

 他方、これまで本社が海外子会社における税務調査プロセスにあまり関与してこなかった多国籍企業の場合、一朝一夕に本社と子会社間の関係を変化させるのは容易ではない。海外子会社から本社に対して税務調査に関する情報がスムーズに提供され、本社及び海外子会社が適切に協働できるようなグループとしてのガバナンス体制を整備することが第一歩であろう。

 

望ましいガバナンス体制

 

 それでは、本社と海外子会社との関係に係る望ましいガバナンス体制のモデルはあるのだろうか。明確なモデルは存在しないものの、税務当局による取組みの中にヒントを見出すことができる。日本の国税庁は2012年より超大企業向けに、「移転価格上の税務コンプライアンスの維持・向上に係る取組」を実施してきている。取組みの一環として「移転価格に関する取組状況確認のためのチェックシート」を作成しており、当該チェックシートでは、「海外の関連法人における移転価格対応(親会社のガバナンス)」がグループとしてのコンプライアンスの維持・向上及びリスクの軽減の大きな柱の一つとされている。

 

 「親会社のガバナンス」に係る具体的な内容として、「日常的に関連法人と税務に関するコミュニケーションが取れる体制になっていますか」や「関連法人に対する現地税務当局による移転価格調査の内容を知っていますか」といったチェック項目が挙げられている。本取組みは移転価格に焦点を当てたものではあるが、前段で述べたように税務当局間での情報交換が強化されている現在、親会社は移転価格に限らず各海外子会社における税務当局への対応に注意を払うべきであろう。

 

タックス・アドバイザーの役割

 

    親会社主導での税務当局対応を含めたグローバル・ガバナンスといっても、現実的には親会社における税務に係るリソースは限られており、各国で異なる制度やプラクティスを把握した上で適切なコントロールを行うことは難しいケースが多いであろう。タックス・アドバイザーも国境を越えて協働し、多国籍企業のグローバル・タックス・ガバナンス実現をサポートすることが求められている。

 


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